2020年 2月 より尺八を始める
巣篭りを予想したわけではないのですが、鳴り物好きの私の稚拙な尺八演奏です。
ネットにアップされているカラオケを使用しているので、カラオケ・ルームで歌っている感じです。
リコーダー・オカリナでの演奏だったら笑われちゃうけど、尺八だったら・・・許してもらえるかな・・・。
エマニエル夫人
いそしぎ The Shadow Of Your Smile
時のたつまま As Time Goes By
夜が来る
尺八初心者 屋山さんへのインタビュー
(その1)
Q:演奏で心がけていることは何ですか?
A:3つあります。
1. メラない(メリをしない)
2. カラない(カリをしない)
3. ユラない(ユリをしない)
です。
Q;それで尺八演奏が出来るのですか!?
A:できません!!(笑)、
でもユリは頭を振らなくてもできるそうですね(私は出来ませんけど)。またその必要性は必須ではないでしょう。クラシック音楽ではクラリネットはビブラートをかけませんものね。メリ・カリは楽器の構造上それらで音程が変えられるという現実に逃げ込み 楽器が進化しなかったんですね(多孔化、キーメカニズム化)。極々わずかの名人は輩出されますが(メリ・カリ・ユリの上手な人)その風景は「死屍累々」というものでしょう。奏者の大半は正確な音になっていないんだけれども「これが尺八の音よ~」、という奏者の言い訳(逃げ)が可能になっている世界ですよ。なぜなら尺八の古典・本曲は採譜が不可能だから(会・流派式の楽譜には書けますよ~これ「奏法譜」ですから~)正解というものはなく音程の検証は出来ないんですよ。
Q:ご不満のようですね。尺八止めてフルートでもやったらどうですか?
A:尺八をフルートのように吹きたいんですよ。尺八とフルートは音質が違います、同列ではないんですよ。それを言ったら「尺八」に大変失礼でしょう。
(その2)
Q : メリ・カリ・ユリをしないで尺八を吹いているようですが、それでどうやったらまともな演奏ができるんですか(出来ないでしょう!?)。
A : 『メリ・カリ・ユリをしない』というのは象徴的な言い方です。管楽器は弦楽器と違って吹奏者の息の強弱・姿勢などによって音程が変化します。それを否定しているのではありません。;お囃子の笛も含めての篠笛、リコーダーなど多くの管楽器に「孔の半開」の操作があります。それは教習者にとってさほどの技術的問題ではないしそれで脱落するほどのことでもありません。ところが尺八の場合、楽器としての致命的欠陥と言えるほどの「不具合」があるにもかかわらず長い年月(半ば意図的に)放置されてきました。
Q : 具体的にはどういうことですか?
A : 私は尺八を始めるにあたって「鳴るほど・ザ・尺八 尺八入門(都山流)」(菅原久仁義 著)を購入しました。その6章に 「一音メリ」 というのがありこう書いてあります。
『半音を正確に鳴らすには高度の技術を要します』
具体的に言うと「微開」と「深メリ」の同時操作があるということです。
「微開」とは 1/4開けるのか、わずかに開けるのか、ちょこっと開けるのか、…微妙です、よく分かりません。
邦楽も西洋音楽同様12の音でなりたっているようですが、これらの音が通常の努力で発音できるというのは楽器が存在する大前提でしょう。そうでなければ音楽は出来ないんですよ。
高齢の私(74才)が『習得に時間的余裕(人生残された時間)がないから諦めた』と言っているのではありません。どんな世代の方でも同じ条件です。なので前回のインタビューで「死屍累々」という言葉を使ったのです。
(その3)
Q : 尺八という楽器には「致命的欠陥がある」とおっしゃいましたが、一方であなたはこの半年の間で120曲ほどを you tube にアップしましたね(上手・下手はともかくとして)。尺八は楽器として成り立たないと言いながら月平均20曲ほど、それも歌謡曲・ポップス・ジャズなど多彩なジャンルにわたっています。尺八の世界ではそれほど多彩なジャンルでの楽譜は販売されていません。楽器、楽譜はどうされているんですか?。
A : 変なことをお聞きになりますね。すべての曲は楽譜で表現できるし、されていますよ。尺八界を除いて。
Q : 五線譜を使っているということですか。
A : それでも良いと思いますが、尺八が実質「移調楽器」であることを考えれば奏法譜でも構いませんね。ロツレチハ(リ)でもいいのです。
Q : 尺八が「移調楽器」ですか?!・・・・・。それで楽器はどのようなものを使っているのですか。「致命的欠陥」は解消されていますか。
A : 尺八歴1年の初級者としては妥協せざるを得ませんよ。「1尺8寸・7孔」を使っています。
Q : 不満がいっぱいでしょう。
A : そうですが、普通の努力で音階がまあまあスムーズに吹ければ「良し」とせざるをえません。ただし、そういう状況にするためには大きな制約と手間が伴います。移調です。1尺8寸・7孔を使っているので基本 B♭・Gm (♭♭、変ロ長調・ト短調) に移調します。尺八をやっている人は楽器の長さを変えていると思いますがこれも移調と同じことです。私は8寸管しか持っていませんけど。
Q : そうすると?
A : 多くの人が挫折する「ツの半音」(E♭)、「ハの半音」(B♭)が孔の 微開、深メリなしで吹けますよ。
Q:お時間です・・・?、また次の機会に 尺八に殺されない方法 をおうかがいしましょう。
(その4)
Q : あなたは「致命的欠陥がある楽器」である尺八を「多孔化」、「移調」などを行いながら「なんとか」吹いているようですがそれは、誰でもできることなんですか?。もしそうであれば何の問題もないんじゃありませんか?。
A : その質問にお答えする前に「尺八」とはどんな楽器か、」ということが世の人々にはまったく知られていないという問題があります。私が尺八を始める時に購入した「鳴るほど・ザ・尺八 尺八入門(都山流)」(菅原久仁義 著)の中の巻末近くにこうあります。
『尺八は5つの孔で音程を操作するため、色々な調にぶつかると「演奏困難」もしくは「不可能」な状態が生ずることがあります。』 (えっ!! なにそれ聴いてネ~ヨ~)
フルートでは1本の楽器で12の長調、12の短調、計24調すべてを演奏することができます。・・・ 。
この落差、致命的欠陥を持った楽器であるということが世の中にはまったく知られていません。
「尺八は仏教の法器である」という言い逃れは現代ではまったく通用しませんよ。同じエア・リード楽器で移調楽器の代表格であるオカリナでさえ、すべての調を吹こうと思えば吹けます。ただし音域の関係があるから持ち換えを行っているだけです。
プロの演奏家、菅原久仁義氏は率直にこれを文章にしていますがその他の指導者はどう言っているんでしょうね。
菅原氏の言う通りならばサイズ違いで沢山の尺八を保有しなければいけないということになってしまいます。竹製での購入を考えるとその出費にぞっとします。尺八は楽器屋さんで売ってないしべらぼうに高価ですね。コストパフォーマンスが最悪の楽器なんですよ。
(その5)
A : (その4)での質問への回答に戻ると、「多孔化」はハードの問題ですので出来ます。9孔まではすでに開発されていますね。が、問題は移調です。
Q : 移調が問題なんですか?
A : 目の前にある自分の好きな曲の五線譜を見ながらあなたはそれを移調できますか。都山流・琴古流尺八譜を見ながらあなたはそれを移調できますか。ほとんどの方は出来ません。出来たとしてもとてつもない時間がかかってしまうはずです。だからとんどの人はそれをしません。
Q : そうするとどうなるのでしょう。
A : 楽譜販売はされていない、吹きたい曲が吹けない、吹ける曲が極めて限定されてしまう、それで興味を失い辞めてゆきます。
一方で、『尺八は音をだすのが難しい』とよく言われ、初級者の悩みも主としてそこにあるように世間一般では思われています。当の本人もそう感じていることが多く、「自分の努力が足りない、能力がない」と感じ辞めていきます。
でも本当の責任はその人にあるのではなく、「楽器」と「教授システム」に「殺された」のです。教習者はそれが自覚できずに自分の責任だとして無力感を味わっているのです。師匠についている、教室にいてはことの本質が自覚できません。なぜならばそこでは楽器の本質に触れることが出来ないし、師匠は意図的に触れません。楽器の中では難しい部類の「音出し」に集中させられ、尺八の楽器としての問題点は意識的・無意識的にぼかされてしまっています。尺八には「努力・能力」以前にとんでもない問題が横たわっていることを承知しないまま教習者の個人的能力が原因だと矮小化されてしまうのです。
(その6)
Q : 「多孔化」と「移調」が 『尺八に殺されない』 対応だとおっしゃいました。そしてまた、移調はほとんどの人が出来ないことだともおっしゃいました。とすれば尺八に興味が湧いてもそれは容易に近づけない・近づいてはいけない対象だということになりますね。それだと「尺八」には将来展望がないということになってしまいますが。
A : そういう歴史をたどってきたんですね。いわば文化的「絶滅危惧種」ですよ。あなたの周り(家族・親戚・友達・職域など)に尺八を吹いている人がいますか?。尺八人口についての具体的な調査はないようなんですが、7~8割は70歳代以上の高齢者だと言われていす。あながち間違いでもないでしょう(私もその年代です)。
Q : 尺八の将来について心配する立場でもありませんが、なにか良い・プラスサイドの兆候はないんですか。
A : なくはありません。尺八という楽器の研究が進み、品質の均一な製品の製作法が実現しつつあります(樹脂製、金型成形・3Dなど)。
。
(その7)
Q:
あなたは 登山流尺八譜 を色々と批判しています。“ 日本映画に付けた「ローマ字字幕」 ”だとも言っていました。それではあなたはどんな楽譜を使っているんですか。「屋山式奏法譜(尺八タブラチュア)」などと、何やらもったいぶった言い方をしていますがそれはいったいどういうものなんですか?
A;
70台半ばの高齢者ですが エレキ・ブーム、フォークソング・ブームを通り抜けてきた世代です。今の若い人が高齢者に対して持っているイメージと違い、かなり音楽(洋楽)と接してきた人の多い世代なのです。
尺八は竹に孔をあけただけの非常に単純な構造の楽器です。ましてや5孔など篠笛・お囃子の笛などに比べてもそのシンプルさは格別です。なので五線譜でなく運指を明示する奏法譜(タブラチュア)でよいのです。都山流尺八譜の「ロ・ツ・レ・千・ハ」は楽譜分類的にはタブラチュアと言えるでしょう。具体的な指の動きを指示するものですからね。タブラチュアはヨーロッパで弦楽器用に考えられたもののようで、五線譜が使われる以前からあったとする説もあります。。
個人的には、ほかの楽器の経験もあり、「洋楽」を楽しもうとしているので「五線譜」でもまったく構わないのです。が、独習中の身としては今後仲間が出来て一緒に吹く時を想定して五線譜でない楽譜、タブラチュアを作っているのです。(小・中)学校で音楽の授業があるとはいえ学校を出ると楽器を趣味としない人は楽譜を見ることもまったくなくなります。長いブランクのある高齢者が五線譜の読み方を再度覚える負担を軽減したいと思ったのです。なのでロツレチハなのです。ただ、ベースは五線譜の概念なので思い出し作業ですみます(勿論個人差はあるのですが)。(未完成な)登山流尺八譜を新たに覚える甚大・不合理な労力に比べたら何でもないことです。
楽譜表記は「美しく」あらねばなりませんが、都山流尺八譜はその内容の不備とともにこの点でもお粗末なものですね。(改善がされてこなかったことを言っているのです、その歴史的役割・貢献は大いに評価しています)。
私の楽譜の特徴は、市販の尺八譜でよくある「五線譜の下にロツレチハ表示」とは異なるものです。五線譜の表示はありません。その大きな特徴は、
・乙音・甲音かがすべての音で明確に判る(奏者の判断は不要)
・初見で演奏が可能(自分の知らない曲でもすぐ吹ける)
という点です。
楽譜は美しくあらねばなりません。手前味噌で言うならば、
「 日本の尺八譜で “最も美しい” 」楽譜
です。パソコン上で作成しています。
この1年間近く、楽譜作成・演奏・録音を200曲以上したのですが(尺八カラオケ広場シリーズ)、これが出来た理由・原因は「自作楽譜」にあるのだと自覚しています。
(その8)
Q.
あなたはこの「尺八カラオケ広場」シリーズを始める最初の頃に、「心がけている」こととして
1.メラない(メリをしない)2.カラない(カリをしない)3.ユラない(ユリをしない)
の3つを上げていました。1年を経過して今もこれらを心がけて演奏しているのですか。
A.
基本的にそうです。「尺八カラオケ広場」は季節限定曲(クリスマス曲)も含めて、この1年で230曲ほど作成・アップしましたが、「おまえは音痴だ」とは言われませんし思ってもいません。アマチュアとしては許容範囲ということでしょう。上の3つのことはあまり気にかける必要もない事なのです。
Q.
ほほう~!?、あなたは音程を重要視しないんですか?
A.
外れた音程で歌っているプロの歌手は数え切れませんよ。でも、それほど批判されることはないし人気を維持している人も多いのです。曲の妙味は音程だけでないともいえるでしょう。
人間は耳に入ってきた音を感じて判断しているわけですが、人の耳はそれほど精巧に出来ているんでしょうか。一般の人が、「ん!、違う音だ」と感じるのは15~20セント以上違った場合だそうです(ちなみに半音が100セントです、1オクターブが1200セントです、チューニング・メーターはこの単位で計測しています)。楽器のチューニングでぴったりプラス・マイナス・ゼロに合わせようとする人がいますが、アマチュアなら無駄なことです(これは人の性格なのでダメとは言えないんですが...)。ゼロ・+5・―5セントみんな同じ音です(としてしか聴こえないわけでしょう)。
なので大雑把ではある自分の耳を信じて、「正しい」音に近づけるよう努力すればいいのです。その方法は色々あるでしょう。そのひとつがメル・カルという動作なのでしょう。あくまでも選択肢の一つです。
楽器の音程精度は一様ではないので指操作だけでも済むこともあるのだと思います。また、孔の周辺を切り欠いてメリを必要でなくした楽器(「メリカット」)も製作されています。とくに私は7孔を使っているので指操作だけで済まそうと思いば出来ると思っています。そうでなければ私のアップした300近い曲はすべて音痴ということになってしまって、大層恥ずかしいこととなります。