ハーモニカ

(その1)

幼い頃ハーモニカを吹いていたかすかな記憶があります。小学校へ入学したあとだったか、入学する前だったか記憶が定かではありません。いずれにしても小学校低学年までの頃の話、60年くらい前の話です。
ハーモニカは私たち兄弟の間でブームだったような気がします。お年玉をもらってハーモニカを買いに行った記憶があります。ラッパ(拡声用のカバー)も買った記憶があるので大分熱中していたのでしょう。
あるとき父が「どれ、貸してみろ」と言って吹いたのですが、そのうまさに感嘆、ますます熱中したと思われます、その頃の大人はほとんどの人がハーモニカを吹けたんでしょうけど。ちなみに父は明治30年代の生まれです。勿論、幼い私は楽譜が読めるわけでもなし、父が教えてくれたわけでもありません。ただ、ハーモニカを吹くのが面白くて楽しくて、一日中吹いていました。父親の真似もしました。それが今思うと基本のテクニックというものだったようです(最近それが「ビブラート奏法」、「ベース奏法」というのだと知りました)。
などということを懐かしく思い出しながら昨年1本・今年1本とハーモニカ(複音・21穴)を買いました。キーは  C と Am です。

(その2)

沢山のハーモニカ愛好者に対し、失礼であることは承知の上で書いております。
昨年ハーモニカ(複音・21穴・C調)を買った時、私がハーモニカに対して持っていたイメージは、
「頭の中にメロディーがあれば何とか吹けるだろう」
でした。
子供の頃のイメージそのまんまです。楽譜などというものを知らない子供がハーモニカを楽しむことが出来ていたのですからこれは真理です。ためらいもなく買いました。C調は兄が選んでくれたんだと思います。子供に調子のことなど分かろうはずもありませんから。
本格的に楽器をやるようになると楽譜を読むようになります。そうじゃないと普通は演奏できませんからね。手持ちの曲集を傍らに置いて吹いてみることにしました。
まずはドレミファ(音階)を吹いてみました。あらっ!!、音階になっていない・・・、なぜ・・・、さては老舗の S社 も 不良品を造るようになったのか~? などと疑念が湧き起こります
、もう一度吹いてみました。音階にならない・・・。おかしい・・・。
今度は実際に簡単な曲を吹いてみることにしました。「大きな栗の木の下で」、ウクレレでも初心者が弾く曲です。で、・・・、え~・・・!、 吹けない!?。
ここでで多くのハーモニカ愛好者の叱責の声が聞こえてきそうです。
「ハーモニカを甘く見るんじゃないよ!!(練習の苦しさを経験しなきゃあ~)」
やっぱり60年間のブランクは大きすぎるか、いや、ハーモニカを吹けていたと思っていた自分の記憶が間違いだったか、長じて音楽的才能がないと自覚した自分への反動で、幼少時代の音楽才能を美化してしまっていたかあ、などと思いながらしばし休憩することとしました。

(その3)

ハーモニカを机の上において階下の居間に・・・、録画しておいたテレビ番組などをみたりしていたらハーモニカが吹ける・吹けないなどという問題はすっかり頭から消え去ってしまっていました。
2時間ほど経って、再び自分の部屋に戻りましたら、机の上にハーモニカが置いてあるじゃないですか。何気なく手に取り口に当てていました、吹いていました。
で、気が付いたのです、あれっ、これって吹けてるんじゃない!?、いったいこれは!?
試しに音階を吹いてみました。ド・レ・ミ・ファ・・・、うん音階になっている。で、「大きな栗の木の下で」は・・・、しっかりとメロディーになっているじゃん。
2時間ほどのインターバルで吹けなかったものが吹けてしまった。何故??

(その4)

大人は理屈で考えようとします、調べます、ということで私も何故なのかの疑問を解くために購入したとき付いていた説明書(といっても紙切れ1枚ですが)を見てみることにしました。この説明書はS社の複音ハーモニカの共通の資料のようです。
「音配列表」が載っています。ドレミファ・・・が五線譜に対応する形で表示されています。それぞれの音が吹音か吸音かも示されています。ドレミファを吹いてみます、ド・レ・ミ・ファの順に口が右に動いていきます。それなのになぜかこの表はレ・ド・ファ・ミ と吸音が先になっています、何故!?。老舗のS社の資料にして変じゃないか・・・、あっ、そうか老舗だからむかしの説明書を見直しせずにそのまんま使っているというわけか、う~ん、幸せな業界だあ(S社のファンの方ごめんなさい)。
それぞれの音をチェック、うん資料はともかくとして楽器としては合格ですね、使えそうです。では、「大きな栗の木の下で」を吹いてみましょう。
おーきなくりのー(ドードレミミソー)・・・ややっ、メロディーになっていない、音がどんどん落ちて(下がって)いく。
これは・・・やっぱり私はハーモニカを吹けないということかぁ、60余年の歳月が頭の中のハーモニカの痕跡をすべて消し去ったということかぁ。

(その5)

吹けそうで、吹けない。これは変な気持ちです。
うん、少し冷静に考えてみよう・・・、
(しばしの時間経過)
ここで面白いことに気が付きました。「大きな栗の木の下で」は、ドードレミミソーと低い音から高い方へ昇っていきます。「音配列表」では左から右へと口が動いていくはずです。ところが私の口は左へ行きたがるのです。左へ行きたがるこの私の動作の理由、根拠は何なんでしょう。
私がハーモニカを初めて吹く人間ならば、目の前に「音配列表」があるのでこれを知識として理解し、右へと口を進めていくでしょう。ところが私の意思に反して(何かが)右へ行くことを拒否し、左へと行こうとするのです。んっ!!、これってひょっとして私の “ ハーモニカ癖 ”なんじゃないのぉ!?。癖は経験から生じます。そうか・・・、わかったぞ~。
目の前の「音配列表」を破って捨てましょう!!、
ほんのわずかで恥ずかしほどではありますが私の「音楽の常識」はかなぐり捨てましょう!!
頭の中でピアノのイメージを叩き壊しましょう!!。

(その6)

ピアノという楽器、鍵盤が規則正しく並んでいます。左から右へ音が高くなっていくように作られています。何故なんでしょう、よくよく考えると疑問も湧いてきます。右利きを前提として作られているんでしょうか、高い音の方でメロディーを弾くことが多いんでしょうから、相対的によく動く右手の方で高い音を担当・・・、勝手な仮定ですが成り立ちそうです。
ネットで音の配列が逆もののがあるか調べてみました。
ありました、これです。

でも、著名ピアニストの特注のようです。経済的に余裕のあるプロが面白半分で作ったのか、あるいはこれで名声を得ようとしたのかよくわかりませんが。
でも、ハーモニカの場合、ひとつしかない口を動かすわけですからどっちでもよさそうです。
で、ネットで 楽器の成り立ち、構造などをわかりやすく解説している <ヤマハ 楽器解体全書>でハーモニカ の記事を読んでいたらこういう文章が載っていました。

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左右逆で吹く
音の配列は、左が低音、右が高音と並んでいますが、引っくり返して吹くこともできます。左に行くほど高音になるように持つと、頭の体操になるかもしれません。
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なるほど私の場合は、初めて手にしたときから低音を右側にしてもったためそれが私にとって正規で、逆にすると頭の体操ということになるんだね。

(その7)

そんなことが分かったところで楽器に裏と表があるのか、細かく見てみることとしました。60年前に出回っていたものはメーカーか博物館にしかないでしょうから、今現在持っているもので類推してみましょう。今持っているものは S社 のものです。子供の頃の記憶ではメーカーは「宮田」か「トンボ」のどちらかだと思いますが。
まず、吹き口を見てみます。端に C とあります。今だからそれを シー よめるのですが小学校に入ったばかりの子供には何の意味も持ちませんね。その調子を手にしたのはおそらく兄姉の誰かが選んでくれたんでしょう(私は5人兄弟の末弟です)。C を意味あるものと認識していなかったと思います。
C を左側にした状態で上面を見てみます。すべて英語で メーカー名(ブランド)、商品名(シリーズ)、複音(具体的には TREMOLO HARMONICA )とあります。子供には読めません、ということは子供にとっては情報なしです。
下面を見てみます。すべて英語で メーカー名(会社名) 、そして MADE IN JAPAN とあります。子供には読めません、ということは子供にとって情報なしです。裏も表もわからない状態でやみくもに吹いていたらいつの間にか低音を右側におけばふけるという状況を自分で作り出したんですね。
さて、昨年今年とハーモニカを入手した私のこれからですが、結論として 「頭の体操を継続する」こととします。正規?の持ち方でやり直すとしたら高齢者である私には時間がもったいないですからね。
ただ、吹いて楽しむ頻度がどの程度か・・・、ウクレレとの相性を考えているわけですが、う~ん、あんまりよくないかもね、リコーダー、オカリナという強敵もいるしなあ・・・。

(おわり)

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