(その4)
ローマ字とは日本語を「かな漢字」でない別の文字で表現しようとしたものでしょう。この尺八譜は同じように五線譜で表現できてしまうものを別の形で表したものといってよいでしょう。ローマ字はアルファベットという世界的に認知された文字での表現ですので世界中の誰しもが音読出来ます。
が、尺八譜は江戸時代の一部のお寺の一部の人間(虚無僧といわれる人々)の中でしか通用しなかったものです。時代的には世の中の人々にとって五線譜はまったく馴染みがなかった、という歴史的な背景はあったとは思うのですがこの伝統的な形に影響されてしまっていて、その後改善もされなかったようです。
なので現代の器楽用楽譜としては分かりにくく不便なものでしかありません。それで私は、 『xx流尺八譜は日本映画に付けたローマ字字幕だ』 と言っているのです。
尺八関係者(プロの演奏家・製管師)はこの楽譜を
「判りやすい」、
「美しい」、
「便利」
「合理的表記法」
と表現しますが、彼らはそれで育ってきたのですからその認識が間違っているとも言えないわけなんですけれど・・・。また、自分の寄って立つところを自ら否定する訳にもいかないんでしょう。お弟子さんたちが困っていても『努力すれば読めるようになります』と心底思っているし、そう言うしかないのでしょう。
(おわり)